カープファンの基本書たり得る1冊:「Carp-0719 カープ黄金時代の幕開け」

しつこいようだが,世にあまたあふれている「カープ本」の中には,毒にも薬にもならないものも多く,中には有害無益なものすら存在する。誰とは言わないがあんな文章で印税取っていること自体が詐欺まがいの商法だといいたくなるような輩すらいるのであって,これぞカープファンが読むべき1冊というのは,なかなか見当たらないのが現実だ。まあ,こと本を選ぶというのはそれほどに難しいのであって,読み手のメディアリテラシィというものが問われているともいえる。

そんな中で,ようやくこれぞカープファン必読というべき書が,今回紹介するこの1冊である。著者は鈴木信宏氏。いうまでもなくRCCの元アナウンサーでカープの初優勝前後から黄金時代,,そして衰退に向かう時期を実況アナウンサーとして見つめ続けてきた人であって,いわばカープの歴史の生き証人のひとりのような方である。彼が敢えてこのカープ本乱立の時代にカープ本を上梓したという興味もあって,さっそく読んでみた。そして,まず序章から心奪われた。これぞ我々が求め続けてきたカープ本のひとつであると確信した。

その理由は,カープはいかに強かったかというところをあぶり出すことにより,現在の問題点を読者に問いかける作りになっていることである。あまたあるカープ本には,その視点がまるっきり抜けている。ただたんに無批判に現在のカープを礼賛しているか,カープの特定の選手を偶像化しているものばかりなのであって,現状批判という視点からの本がないのである。それだけでも,この本は,すべてのカープファンにとって読む価値があるといってよいと思う。

もちろん,実況中継の裏話以外は,黄金時代を知るカープファンにとって何か新しい話があるわけではない。その意味では,多少物足りぬという読後感を持つ人もいるだろう。それに,鈴木氏と私との見解の相違も相当あって,ある程度批判的に読むことも必要であると思う。もうひとつ,本書の限界は,出版元がザメディアジョンという広島の出版社であることから,はっきり言ってカープ球団に都合の悪いことは明示的に書かれていない。言うまでもなくカープ凋落の原因は外ならぬ松田元が権力を握ったからなのであるが,それについては触れられていない。きっと書きたくても検閲があったのだろう。それは,先代の故松田耕平オーナーの功績を高く評価する件によって暗喩するのが精一杯なのかなと感じた。

しかし,それを持ってこの本の価値を低からしめるものではない。私はまず序章の表題である「Aクラスでは納得しない『カープ黄金時代』を知るファン」に共感した。そして,疑問点やこれはおかしいんじゃないかという点を含めてもなお,この本のコンセプトは高く評価できると思う。Amazonレビュー流にいえば,星4つ半くらいは付けてよいのではないか。それだけの価値は,十分にある。

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謎が解けるかは読者次第?:「「昭和天皇実録」の謎を解く」

昭和史には,紐解けば紐解くほどとかく謎が多い。それは思うに,一級資料とされているものはあまたあれど,それにはやはり何らかの形でバイアスがかかっているからだというのが本当のところだろう。さらにいうならば,昭和史を語るに当たっては,やはり昭和天皇という者の立ち位置をどう捉えるかというところに言及せざるを得ないからだろうと思う。ここで,戦前派,戦中派,戦後派の思いが千々に乱れて収拾が付かなくなっているからなんだろうと,私などは思う。そのためには,昭和天皇が何をお考えになり,いかなる立ち位置にあらせ給われたかというところが見えてこないことにはどうにもならないのだろう。

さて,昭和天皇といえば,1990年に「昭和天皇独白録」が文藝春秋によって発掘されたところではある。私も読んだのだが,なるほどこれまで現れてこなかった率直なお言葉が出て来ているところもあるが,やはりこれはいわゆる「東京裁判対策」に編纂された匂いがするのであって,そういう意味ではやはりバイアスがかかっていると言わざるを得ない。しかし,今回の「昭和天皇実録」は違う。なんといっても宮内庁が編纂したれっきとした「正史」だ。本来であればぜひ全文を読み解いてみたいところである。

が,なんせ全61巻12000ページという大部である。とてもじゃないがただの歴史好きで読み解ける分量ではない。と,いうこともあってか,文藝春秋が半藤一利,保阪正康,御厨貴,磯川道史という4人の泰斗に「徹底検証」させ,対談形式で編纂したのがこの1冊である。中にはその名前を見ただけで読む気がなくなるという向きもあるかもしれないが,まずはそういうバイアスを捨てて手にとって欲しい。それだけの価値はある。メインはやはり半藤一利と保阪正康の対談なのであるが,同じ箇所に言及しても意見が分かれているところもあって,なかなか面白い。それに,単に「読み解く」だけではなく,あるところでは「起草者意思」に踏み込むなどして,なかなか刺激的ではある。やはり,それは正史であるがゆえの限界をも指摘しているのだろう。

もちろん,すべての人に取って満足するとはいえないだろう。特に歴史書というのはその人の「史観」によって好き嫌いが分かれるところが多いのはやむを得ない。しかし,おそらくは昭和史の第一級史料ともいうべきこの「実録」に触れずして,今後昭和史を語ることは出来なくなっていくと言っても過言ではあるまい。そのためのとっかかりとして,十分買える一冊である。Amazonレビュー的には星4つ付けてもいいだろう。

なお,「昭和天皇実録」については,「昭和天皇実録 第一」「昭和天皇実録 第二」が刊行されており,今後随時配本予定とのことである。私は書店でその外観だけ(ビニール包装してあるので立ち読みは出来ないので)眺めたのだが,あれだけの分量で税込み約2,000円は良心的価格といってよいだろう。

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「超濃厚」とは言えないが:「広島東洋カープ読本」

ここ数年,いわゆる「カープ本」というものが大量に出版されていることは,もはやここで語るまでもあるまい。

私は,そのほとんどの本に実際に手にとって目を通したが,残念ながら,「お買い上げ」に至る本というものは非常に少ない。昨年出版された「広島東洋カープ黄金時代の記憶―CARP LEGENDS 」「カープ投手王国の系譜―広島東洋カープ 」は数少ない例だが,これもあくまで資料的価値を見込んだものである。そして,もうはっきり言ってしまうならば,立ち読みで秒殺に至る粗製濫造本の,なんと多いことか。特に某S元教授のものなど,破り捨ててやりたいくらいである。

話が逸れた。その中でも,文句なしにお勧めできるのは,この1冊である。同旨のムックは例によってベースボールマガジン社から発売されているのだが,その何倍も内容が濃い。インタビューの内容構成もしっかりしているし,なにより「ドラフト検証」とか,「トレード&FA人事考察」とか,データもなかなか筋のいいベクトルである。そしてクライマックスは今や明るいおじさんに姿を変えてしまった「前田智徳の実像に迫る」という2論文に至るが,非常に読み応えがある。凡百の前田本のどこをひっくり返しても出てこない珠玉の論考である。まずカープ本を何か買おうとする向きには,まずこの1冊で十分だ。

で,敢えて残念なところをあげるとすると,やはりカープの低迷の原因に触れられていないところである。まあ,読む人が読めばちゃんと分かる仕組みにはなっているのだが,やはり天下の洋泉社とてそれにズバリと斬り込むわけには行かなかったのだろう。そりゃそうだ。ハジメの不興を買うような内容をカープの協力の下書くことなんて,できるわけがない。即刻出入禁止になってしまう。それが,凡百のカープ本のがカスほども面白くない最大の原因なのであることは,まあ言うだけ野暮だろう。

まあ,「超濃厚」というにはちょっと,と思うが,十分中身の濃い1冊である。Amazonレビューで言うなら星4つは与えられるだろう。

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いわば弁明の書:野村謙二郎「変わるしかなかった」

言うまでもなく,退任したばかりの監督がその5年間の治世を赤裸々に記した本ということで,ずいぶん評判らしい。AmazonのReviewもことごとく5つ星である。これだけ見ると,さぞかし立派なことが書いてあるのだろうと思われる向きも多いようで,現にかなり売れているらしい。故宮脇俊三氏曰く,「売れる本が良書である」という定義に従うならば,これは紛れもなき名著であるということである。

それでは,私が手にとって読んでみた感想はどうか。率直に言う。

やっぱり野村謙二郎って人は,中身の薄っぺらい単細胞の人だったんだねえ。以上。

確かに本人は至極まじめに書いたのだと思う。しかし,何度読み返しても書いてあることがすーっと右から左に流れていってしまうのだ。そしてどこか腑に落ちないところが,必ずある。そこは,彼が必死に弁明をしているところである。だから,必ずつじつまが合わないところが出てくる。逆説的にいうならば,それを見つけて彼が何を考え何を思って指揮を振るっていたのかということを読み解くことにこの本の価値があると言える。その意味では,それ相応の評価をしてもよい。

しかし,それをさらに裏返して,要は表に返してみるならば,いわゆる「名将論」の系譜に属する書として評価することは,できない。要は全編これ弁明の書である。格好付けてないところだけはよしとせざるを得ないが,それで野村謙二郎を持ち上げることは出来ない。即ちこの本こそ,読者のメディアリテラシィが試される本といっても良さそうだ。

こんなことを書けばネガティヴキャンペーンではないかという向きもありそうだが,決してそんなつもりはない。「野村謙二郎の5年間」をどう読み解くかという第一級の史料であることは間違いない。それをどう評価するかは,読み手によって異なって然るべきということだ。

最後に,私がReviewをつけるならば,星3つといったところだろうか。AmazonのReviewは私にいわせれば過大評価だ。本当にこの本を読んで書いてるのかという疑問を持たざるを得ない。

読む価値はあるとは思うけれども。
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