謎が解けるかは読者次第?:「「昭和天皇実録」の謎を解く」

昭和史には,紐解けば紐解くほどとかく謎が多い。それは思うに,一級資料とされているものはあまたあれど,それにはやはり何らかの形でバイアスがかかっているからだというのが本当のところだろう。さらにいうならば,昭和史を語るに当たっては,やはり昭和天皇という者の立ち位置をどう捉えるかというところに言及せざるを得ないからだろうと思う。ここで,戦前派,戦中派,戦後派の思いが千々に乱れて収拾が付かなくなっているからなんだろうと,私などは思う。そのためには,昭和天皇が何をお考えになり,いかなる立ち位置にあらせ給われたかというところが見えてこないことにはどうにもならないのだろう。

さて,昭和天皇といえば,1990年に「昭和天皇独白録」が文藝春秋によって発掘されたところではある。私も読んだのだが,なるほどこれまで現れてこなかった率直なお言葉が出て来ているところもあるが,やはりこれはいわゆる「東京裁判対策」に編纂された匂いがするのであって,そういう意味ではやはりバイアスがかかっていると言わざるを得ない。しかし,今回の「昭和天皇実録」は違う。なんといっても宮内庁が編纂したれっきとした「正史」だ。本来であればぜひ全文を読み解いてみたいところである。

が,なんせ全61巻12000ページという大部である。とてもじゃないがただの歴史好きで読み解ける分量ではない。と,いうこともあってか,文藝春秋が半藤一利,保阪正康,御厨貴,磯川道史という4人の泰斗に「徹底検証」させ,対談形式で編纂したのがこの1冊である。中にはその名前を見ただけで読む気がなくなるという向きもあるかもしれないが,まずはそういうバイアスを捨てて手にとって欲しい。それだけの価値はある。メインはやはり半藤一利と保阪正康の対談なのであるが,同じ箇所に言及しても意見が分かれているところもあって,なかなか面白い。それに,単に「読み解く」だけではなく,あるところでは「起草者意思」に踏み込むなどして,なかなか刺激的ではある。やはり,それは正史であるがゆえの限界をも指摘しているのだろう。

もちろん,すべての人に取って満足するとはいえないだろう。特に歴史書というのはその人の「史観」によって好き嫌いが分かれるところが多いのはやむを得ない。しかし,おそらくは昭和史の第一級史料ともいうべきこの「実録」に触れずして,今後昭和史を語ることは出来なくなっていくと言っても過言ではあるまい。そのためのとっかかりとして,十分買える一冊である。Amazonレビュー的には星4つ付けてもいいだろう。

なお,「昭和天皇実録」については,「昭和天皇実録 第一」「昭和天皇実録 第二」が刊行されており,今後随時配本予定とのことである。私は書店でその外観だけ(ビニール包装してあるので立ち読みは出来ないので)眺めたのだが,あれだけの分量で税込み約2,000円は良心的価格といってよいだろう。

にほんブログ村 野球ブログへにほんブログ村 野球ブログ 広島東洋カープへBlogPeopleにほんブログ村 サッカーブログへにほんブログ村 サッカーブログ サンフレッチェ広島へSIGMA People

PVアクセスランキング にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です